「地消地産」について
今回は、「地消地産」について考えたいと思います。
「地産地消」との違いや農家や地域へのメリット等を、書籍を参考にまとめてみたいと思います。
参考書籍:地上5月号[特集]地域の安心を確保する「地消地産」のススメ(発行:一般社団法人家の光協会)
- 「地産地消」と「地消地産」
- SDGsに繋がる「クリエイティブアウト」
- 地域における食の循環
- まとめ
「地産地消」と「地消地産」
まずはこの2つの言葉の意味から。「地産地消」については、なんとなく自分達の住む地域で生産されたものを自分達の住む地域で消費するというイメージが湧くかと思います。では、「地消地産」は?
福島大学食農学類の小山教授は、「それぞれの発想の出発点にあるものが異なる。」と述べたうえで、このように定義されております。
◎地産地消(プロダクトアウト)・・・地域で生産したものを地域で消費すること。作り過ぎて余ったから食べてもらおうといった、生産者のサイドの論理に陥りがち。
◎地消地産(マーケットイン)・・・地域で消費されるものを地域で生産すること。地域の農業のあり方を無視した消費者のわがままになりがち。
地産地消の発展段階より(福島大学食農学類 小林良太教授)
分かりやすい!
作ったものを売るのではなく、求められるものを作る(マーケットイン)ことが大事であり、その考えが地消地産である!
が、消費者の求める声ばかり考えて、産地形成していくと、地域農業の維持は難しいという事ですね。
作りやすいものばかり作っても売りづらい、売りやすいものばかり作っても作りづらい、これが農業(農業で稼ぎ続けること)の難しさでしょうか。
ただ、新型コロナウイルスの流行で、食料やエネルギーの多くを海外に依存している日本の社会構造が明らかになった今、食料における“国消国産”にも貢献しうる「地消地産」という考え方は重要と言えますね。
◎国消国産・・・国民が必要とするものは、その国で作ることが望ましいという考え方。
では、どのように「地消地産」を進めていけばいいのでしょうか?
SDGsに繋がる「クリエイティブアウト」
そこで大事なのが、「クリエイティブアウト」という考え方です。
◎クリエイティブアウト・・・地域に住む生産者と消費者が対話し、よりよい食の循環が生まれること。この時、消費者はただ消費する存在から生活者へ変化する。
地産地消の発展段階より(福島大学食農学類 小林良太教授)
前述の通り、「地産地消(プロダクトアウト)」も「地消地産(マーケットイン)」もそれぞれ生産者から、消費者からの思いが強くなりがちで、それだけでは一方的な考え方と言えます。それぞれの言い分を伝え合い、"対話”することで、新たな食生活が形づくられる=「クリエイティブアウト」。
この「クリエイティブアウト」の段階に至るためには、「地産地消」だけでなく、「地消地産」の発想が欠かせないということですね。
「地産地消(プロダクトアウト)」 ⇒ 「地消地産(マーケットイン)」 ⇒ クリエイティブアウト
これらの段階を踏み、"地域における食の循環を作る”。
「地消地産」の進め方のポイントとしては、生産者と消費者との"対話”が重要だと考えられますね。
(地方における地域内だったとしても、この"対話”が難しいんでしょうが・・・)
また、産地側から生活者に食生活を提案し、たがいに理解を深めるクリエイティブアウトの考え方は、自分たちの住む地域のライフスタイルを持続可能な状態で維持することにもつながり、SDGs(持続可能な開発目標)の実践に繋がるということですね。
地域における食の循環
一般的な青果物の流通(市場やJA)=広域流通では、消費者がどこで、どのように食材を口にし、どんな感想を抱くかを知ることはできません。消費ニーズから始まる地消地産では、自身の青果物を一部でも地域に流通させれば、生活者の動向をキャッチすることができます。また、作れば必ず買ってもらえるというのが、農家側の最大のメリットだと考えられます。
また、広域流通の場合、出荷後の加工やパッケージなどの付加価値の部分は、加工業者や流通業者、卸業者が担いますが、青果物を地域で流通させる場合は、付加価値の部分を農家みずから高めていく必要があります。付加価値の部分を人を雇って作業することで、地域に雇用が生まれます。地域で食を循環させることは、雇用を拡大し、地域の経済を大きくすることにも繋がると言えます。
新型コロナウイルスにより、広域流通のリスクが高いことが露になりました。今後は生産量に対して地域内での流通を1~2割確保する取組みが、重要になってくる(8割を広域流通に回したとしても、地域における食の安全が保障される状態)。 ※参考書籍抜粋。
なるほど、確かに社会全体の今後の流れとして、地域内に流通させるという意識が大事なんですね。。。
とはいえ、農家からすると広域流通だろうが地域内への流通だろうが、とにかく1円でも高い販売先へ出したいと思うのが、本音だと思います。実家のハウスきゅうりにしても、全量市場出荷ですが、1日50cs出そうが、100cs出そうが、出荷後に大都市の量販店に並ぶことになるのか、地元のスーパーに並ぶことになるのか気にする素振りを見たことがありません。気になるのはいつも「いくらで売れたか」です。(個人的には、農家はそれで良いと思っていて、良いものを、できるだけたくさん作ること(品質と収量)に時間を費やすべきと思う派なのですが)
ただ、これだけでは社会全体の流れとしてはまずい訳で、農家としてもリスクが高いという訳ですね。
(うーん、農家の気持ちを思うと、言葉では理解できるような、できないような(笑))
とはいえ、農家自身がそういった意識を持つことが大事であり、ポイントは"生産量の1~2割を地域に流通させる”という事だと思います。全量ではなく、この1~2割を地域内に流通させる意識を持つことで、結果として農家の販売におけるリスク分散に繋がり、更にその結果として、地域における食の安全保障にも繋がるのだと思います。
(これを実家のベテラン農家である祖父や父に理解してもらうのはまたハードルが高い訳ですが(笑))
持続可能な食の循環の観点からは、こういった考え・意識を持つ必要がありそですね。
まとめ
以上、今回は「地消地産」から、地域における食の循環について考えてみました。
新型コロナウイルスにより、社会が大きく変わり、様々な分野での大都市の一極集中から地方・地域への分散の動きというものが活発になってきている現状にあるかと思います。食料もそのうちの1つかと。
これまでは農業が盛んな地方から、人口の多い大都市へ青果物を送るというのが青果物の一般的な流通だったと思いますが、地方に人が分散することにより、流通そのものが変わるのかもしれませんね。
※もちろん、物量・物流から考えるとそんな簡単なことではないと思いますが。
(そう考えると、なんだかんだで物量を持っていると地域は色んな意味で強いのか・・・)
私達が思い描いている“農業を日常の中で感じられる空間(space)づくり”の1つに、消費者自らが生産者となり、求めるモノを自分で作るという仕組みを考えています(シェア畑のようなイメージでしょうか)。
これらの仕組みづくりにおいても、地域とどう関わるか、生活者との"対話”が重要になると感じました。
販売だけを考えても難しいですが、地域づくりにも関わる農業って、ほんと複雑ですね。。。
だからこそ国としても持続可能な農業として守っていく必要があるのでしょう!
それでは、また!
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